無限ループ『恋はデジャブ』

あの日に巻き戻したい

唐突ですが「二日酔いの朝」は自己嫌悪に陥りますよね。
翌日の頭痛と胃のもたれで、「また、やってしもたー」と前夜の痛飲を後悔する。
もしも、願いが叶うならば前日に戻りたい。そして、「飲み過ぎに注意しなよ。その辺で、やめとけ」と前日の自分に教えてあげたくなります。

お酒の失敗のみならず、「連れ合いとの些細な喧嘩」、「不注意で自家用車のドアをこすった」など、『覆水盆に返らず』的な過去の失敗に対して、時間を遡って、その原因を取り除きたい妄想に陥ることが良くあります。

そんな妄想とあの日に巻き戻したい願望」を現実化する映画をご案内します。

言うならば、「覆水が盆に返っちゃいます」的な時間の巻き戻し映画です。

 パラレルワールド、無限ループなどの巻き戻しジャンルの本家本元の映画です(インターステラー、アバウト・タイム、ハッピー・デス・デイなどの先祖的映画)

ビル・マーレイ主演の『恋はデジャブ』

本日の”忘備録映画”は、1993年公開、ハロルド・ライミス脚本・監督の「恋はデジャ・ブ」です。
 原題は「Groundhog Day(キリスト教の聖燭祭)」ですが、分かりにくいので邦題に『デジャ・ブ(deja-vu)=既視感』のワードを当てたセンスが素敵です。

 映画の概要は、超常現象により主人公が1990年2月2日の一日の生活が永遠に反復して、その日から抜け出せない「無限ループ」の世界での既視感にうんざりする物語。
 同じシーンが無限ループで何回も繰り返される「実験的な映画」です。観客によっては初めの20分で飽きるかも知れません。

 聞くだけで恐ろしい「SFホラー」だと思いきや、ラブコメ映画です。
そして、映画の本質は哲学的です。

主役はゴーストバスターズでお馴染みのコメディアン、ビル・マーレイ(日本で言うと大地康雄みたいな喜劇ができる笑顔が怖い名俳優)。

元祖、黒髪ソバージュ「アンディ・マクダウェル」

ヒロインは、“ロレアル・パリ”の化粧品CMで有名な元祖、黒髪ソバージュ美女のアンディ・マクダウェルです。

90年代の赤い口紅と黒髪ソバージュ・ブームは、今井美樹ではなく、彼女のテレビCMが巻き起こしたと僕は思います。
元パリコレ・モデルの絶世の美女ですが、演技力がダメだとの評価で(実は演技が上手い)、シリアスよりも、もっぱらラブコメの女王でした(「グリンカード(1990年)」、「フォー・ウェディング(1994年)」など)。

あらすじ(映画のイントロ)

 舞台は、真冬のペンシルバニア州の田舎町「パンクスタウニー」。

毎年2月2日の聖燭祭(せいしょくさい:キリスト教の「立春」の祝い)の頃に、冬眠したモグラ(実際はモグラみたいなネズミ)を叩き起こして、春の訪れをモグラの口から直接に訊く、伝統的な気象占いのイベント「グラウンドホック・デイ」が町の広場で行われる。

いわゆる、みうらじゅん氏が提唱する「とんまつり(頓馬な祭り)」のアメリカ版です。

主人公のフィル・コナーズ(ビル・マレー)は、地元テレビ局で有名な気象予報士で、情報番組のTVプロデューサーのリタ・ハンソン(アンディ・マクダウェル)と共にテレビ取材のために、イベント前日にパンクスタウニー町に前入りする。
 非科学的な気象占いイベントに対して、気象予報士のフィルは、皮肉たっぷりにテレビカメラの前で「グラウンドホック・デイ」の様子を生中継する。
 町の人々が楽しんでいる「とんまつり」に対して大人げないコメント、地元ファンに対しても素っ気ない塩対応。この男はいけ好かない

無限ループ

テレビ中継が終わり、即座に田舎町から都会の自宅へ帰ろうとするが、天候急変と猛吹雪で翌日までパンクスタウニーに足止めされる事になる。
その晩は、前日と同じ宿、町の由緒あるB&Bホテルに延泊する事になる。
翌日の朝六時ちょうどに目覚ましがわりのラジオが鳴り始める。

吹雪は止んで静かな朝だ。しかし、なんだかおかしい。
昨日と同じ会話をラジオDJが始める。

ホテルの朝食で周りが昨日と同じ会話をしている。

町ですれ違う男たちが、昨日と同じ場所、同じ時間、同じ洋服で同じくだらない話で声をかけてくる。

「昨日と同じじゃないか!?」

「今日はいったい、何月何日なんだ!」
「2月3日のはずだ!」

だんだんと不安になってくる。

ここから先は、是非に本作をご覧ください。

ツノムラ
ツノムラ

映画評論家の町山智浩さんの解説(ポッドキャスト)では、本作脚本は、哲学者:フリードリヒ・ニーチェの書籍「ツァラトゥストラ」で語られる『永劫回帰(Eternal recurrence)』の思想に影響を受けていると仰られています。

本作監督のハロルド・ライミスは、ゴーストバスターズ1および2でも脚本を担当し、ストリー構築の上手さが秀でています。

永劫回帰『禍福は糾える縄の如し』

永劫回帰について、ニーチェは、人生の出来事は、前に進むでもなく、後ろに下がるでもなく、円のようにぐるぐる回るものだ」と著述している。

“苦痛も幸福も同じように繰り返される。仮に苦労が99%を占めていても、1%の幸福があれば、再び1%の幸福が訪れる。

人は、それを糧に生きることができるのではないか” と書いている。

人生はぐるぐる回る、「禍福は糾える縄の如し」だから苦痛をさっさと忘れて、次の幸福の巡り合いを待つ。僕には堪え難いけれど、ストイックが必要な時はこの映画を思い出します。

ドーナッツのヤケ食い

最後に本作で僕が大好きなシーンを紹介させてください。

彼が完全に萎えて、絶望的になって、不健康なピンク色をした砂糖たっぷりのドーナツを食べ続ける場面です。

コーヒーポットから直接に口でラッパ飲みするシーンも好き。

ストレスでドーナツをヤケ食いする気持ち。よく分かる。激しく同意。
手と口の周りが油と砂糖でギトギトになる。
お尻のズボン布地で拭いてやろうかと思いますが、あとが怖いのでウェットテッシュで拭きます。

今夜の帰りに「ミスター・ドーナツ」でポンデリング、オールドファッション、フレンチクルーラーの3つを買って、素手で掴んで、砂糖まみれの指先をベロベロしてやろうかと思います。

それでは、ワイルドな夜をおやすみなさい。

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